染木組子へのこだわり
『木楽』の商品を特徴付けるもの、それは木地を染めた「染木組子(そめきくみこ)」です。
指物の技法を生かした組子細工は当店だけのものではありませんが、同業他社さまを拝見するに、木地の色そのものを生かした商品を製造・販売されているケースが圧倒的です。樹木一つとってもその堅さや木地の色はバラエティ豊かで、天然の色を生かすだけでもあらゆる紋様を作ることができるからでしょう。
ところが、木地の色を生かすだけでは、どうしても商品のテイストが「和風」に偏る傾向になってしまいます。『木楽』が「染木組子」に取り組むのには、これまで「和」の場面で使われがちだった組子細工を「洋」のシーンにも浸透させたいという思いがあるからなのです。
もっとも、『木楽』も以前から「染木組子」に取り組んでいたわけではありません。
きっかけは、福井県越前市との共同事業を通じて知り合った、あるデザイナーさんのアドバイスでした。他社さまと同じように「組子細工は木肌や木地の色を生かしてこそ。木を染めるなんて常識外れ」と考えていたところ、「試しに染めてみては」と助言をいただき、だまされ半分で試してみたのです。
常識をちょっと破ったことで、新たな発見と展開が生まれてきました。
『木楽』の染木組子では、とりたてて高価で特別な染料を使っているわけではありません。しかし、同業他社さまも一緒に出展する各地の展示会を見ても、いまだ同様の商品を見かけることはありません。やはり「木工屋・建具屋の常識を外れたこと」をやっているからなのでしょう。
国内の展示会では両極端の反応をされる『木楽』の商品ですが、おかげさまで、海外からテーブルウェアとしてのご注文をいただくまでにこぎ着けることができました。「和」を感じさせる日本古来の紋様と、現地のライフスタイルに沿った「洋」の色合いを評価いただけたからでしょうか。
そう考えると、『木楽』が手がける組子細工は、インドから伝来し独自の進化を遂げた「日本のカレーライス」のようなものなのかもしれません。